Column

Vol.13

梅雨だると運動——脳神経外科医が解説する、自律神経を整えるエビデンスと続けやすい習慣

公開日:2026.05.17 / 更新日:2026.05.17

  • ストレス
  • パーソナルトレーニング
  • 自律神経

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株式会社Sazanami代表取締役 大原 啓一郎

[ 執筆者 ]

株式会社Sazanami代表取締役

大原 啓一郎

脳神経外科専門医
脳神経血管内治療専門医
日本医師会認定健康スポーツ医

予防医療と運動療法の普及に取り組む。運動と医療を、もっと身近に。心地よく通える空間で、自然と健康になれる場を作りたい。そんな想いから、
フィットネスブランド「sazanami」を立ち上げた。

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朝、カーテンを開けると今日も雨。ベッドから起き上がるのにいつもより一拍長くかかり、午前中はずっと頭がぼんやりしている
——梅雨の時期、そんな日々に心当たりはありませんか。

「気のせい」で済ませようとしても、毎年同じ季節に同じ重さがやってくると、さすがに何かあるのかも、と気になってきますよね。じつはこの感覚、多くの方が共通して訴える、ごく自然な反応です。脳神経外科医として外来でも頻繁に耳にする話題のひとつでもあります。

本コラムでは、梅雨期の不調について現時点の研究で分かっていること・まだ分かっていないことを整理したうえで、雨の日でも無理なく続けられる「整える運動」を医師の視点からご紹介します。

[ この記事でわかること ]

  • 「梅雨だる」の正体と、気圧・湿度・温度が体調に与える影響
  • 気圧変化と片頭痛・自律神経の関係
  • 運動が自律神経を整えるメカニズム
  • 雨の日でも自宅・オフィスでできる「整える運動」5選
  • 食事・入浴・睡眠リズムなど、運動と組み合わせたい3つの生活習慣
  • 「これは様子見せず受診」の判断基準と、医療機関に相談すべきサイン
  • 1. 「梅雨だる」は気のせいじゃない、でも”病気”でもない

    梅雨にあらわれやすい、5つのサイン

    診察室でよく聞かれる声を挙げると、こんな具合です。一つでも当てはまるなら、あなたの感覚は決して大げさではありません。

    • 全身のだるさ・倦怠感:朝の起床がつらい、午後に強い眠気がやってくる
    • 頭重感・頭痛:とくに雨が降る前後、頭がずっしり重くなる
    • 気分の沈み:理由が思い当たらないのに、やる気が出ない
    • むくみ・関節のこわばり:足や手が重だるい、指輪がきつく感じる
    • 睡眠の質の低下:寝つきが悪い、夜中に何度も目が覚める

    こうした状態は「梅雨だる」「気象病」と呼ばれることがありますが、いずれも正式な医学用語ではなく、暮らしの中で生まれた呼び名です。背景には片頭痛、自律神経の揺らぎ、季節性の気分の落ち込みなど、複数の要素が絡んでいます。

    原因はひとつじゃない——気圧・湿度・温度の三重奏

    梅雨期の特徴は、気圧が上下し、湿度が高く、気温が大きく振れることです。この3つが組み合わさって身体に負担をかけると考えられていますが、「どれが、誰に、どのくらい効くか」は人によってかなり違います。だからこそ、「梅雨だるは万人共通の症状」ではなく、自分のパターンを掴むことが回復への近道になります。

    気圧と体調——いま分かっていること、まだ分かっていないこと

    低気圧で頭痛に悩む女性

    低気圧で頭痛が増えるのは「気のせい」ではない

    2024年に発表された片頭痛と気圧変化のシステマティックレビューでは、低気圧や急な気圧変動が片頭痛発作のトリガーになり得ることが、複数の観察研究で繰り返し示されています(Cureus, 2024)。「雨の日は頭が重くなる」という体感は、研究の世界でも一定の裏付けが進んできている、というのが現在地です。

    頭痛と運動の関係については、別記事「頭痛は運動で改善できる?——脳神経外科医が解説する、頭痛のタイプ別アプローチ」もあわせてご覧ください。

    耳の奥にある「気圧センサー」仮説

    気圧の変化を、耳の奥にある前庭器官が感じ取っているのではないか——そんな仮説が、マウスを使った研究から提唱されています(Sato J, et al. PLOS ONE, 2019)。動物実験段階の知見であり、ヒトでまったく同じことが起きていると断言はできませんが、「気象病」という言葉の背景にある有力な仮説のひとつとして知られています。

    完全に分かっていなくても、できることはある

    気圧と不調の細かい仕組みは、まだ研究の途上です。それでも待っているだけが選択肢ではありません。ここから先は、エビデンスがしっかり積み上がってきた領域——「運動と自律神経」の話に進みましょう。

    雨の季節に運動が効く理由——カギは自律神経

    心拍のゆらぎが教えてくれる、運動の効き目

    心拍と心拍のあいだには、ごくわずかな「ゆらぎ」があります。これを心拍変動(HRV)と呼び、自律神経のバランス、とくにリラックスを担う副交感神経の働きを映す鏡として、長年研究が積み重ねられてきました。

    2025年に公表された大規模なメタアナリシスでは、長期的な運動習慣がHRVの代表的な指標(SDNN・RMSSDなど)を改善することが報告されました(Frontiers in Cardiovascular Medicine, 2025)。運動を続けている人は、自律神経が”揺らぎに強い”状態に整いやすい、というイメージです。気圧の上下に振り回されにくい身体は、こうして作られていきます。

    梅雨期は「軽め・続けられる」が正解

    同メタアナリシスでは、運動の種類によってHRVへの効き方が違うことも示されています。HIITやレジスタンストレーニング、有酸素+筋トレの組み合わせなど、いずれも一定の効果が報告されていますが、梅雨期に大事なのは”続くこと”です。

    体調が揺らぎやすい時期にハードな運動を詰め込むと、かえって交感神経を刺激してしまい、夜の寝つきや翌日のだるさに響くことがあります。目安は「少し息が弾むけれど、隣の人と会話はできる」くらいの中強度。これを週に何度か、淡々と続けていきましょう。

    自律神経全般の整え方は、「自律神経を整える運動とは?——脳神経外科医が解説する、自律神経の乱れと運動の関係」でも詳しくお話ししています。

    雨の日でもできる、整える運動5つ

    五反田のパーソナルジムsazanamiでトレーニングをする男性

    ここからは、雨でも自宅やオフィスで取り入れやすい5つの運動をご紹介します。どれも特別な道具は不要。「梅雨だるを治す魔法」ではありませんが、身体活動量を保つことそのものが、揺らぎに強い自律神経を育てる土台になります。

    ① 朝3分の「窓際スイッチ」

    起きたらまずカーテンを開け、窓際に立ちます。両手をぐっと上に伸ばす、肩を大きく回す、首を左右にゆっくり倒す——たったこれだけを3分。曇り空でも朝の光は体内時計をリセットする力を持っており、一日のスタートをスムーズにしてくれます。

    ② デスクで肩甲骨を「ほどく」

    長時間のデスクワークが続くと、肩から首にかけてガチガチに固まり、これが頭重感の引き金になります。1時間に1回、椅子に座ったまま肩甲骨を意識して大きく回しましょう。10回ずつでOK。後ろで手を組んで胸を開く動きを加えると、呼吸まで深くなります。

    ③ 室内で「踏み台昇降」10分

    雨の日でも確実にできる有酸素運動の代表格。階段の最下段や15〜20cmの踏み台を使い、左右の足で交互に昇り降りを10分。お気に入りの音楽やドラマを流しながらでも十分です。「会話はできるけれど少し息が弾む」くらいが、ちょうど良い強度の目安です。

    ④ 寝る前の「ゆるめる時間」

    就寝1時間前を目安に、腹式呼吸とゆったりしたストレッチを5〜10分。仰向けで膝を抱える、横向きで体側を伸ばす——そんな”力の抜ける動き”がおすすめです。ストレッチ単独で自律神経が劇的に整うとまでは言えませんが、「眠りに向かう儀式」として暮らしに組み込む価値は十分にあります。

    ⑤ プランクで体幹を「再起動」

    うつ伏せから肘とつま先で身体を支えるプランクを30秒、休憩30秒を挟んで3セット。体幹の深層筋が目を覚まし、姿勢が安定するので、デスクワーク疲労の予防にもつながります。最初は30秒がきつくても大丈夫。続けるうちに少しずつ伸ばしていけば、1ヶ月後の身体は確実に変わっています。

    「これは様子見せず受診」のサイン

    多くの梅雨だるは生活習慣の調整で和らぐ範囲ですが、見過ごせないサインも存在します。以下に当てはまる場合は、運動や食生活の工夫を続ける前に、まず医療機関で評価を受けてください。

    • 頭痛が日常的に強く、市販薬の使用頻度が増えている(片頭痛・緊張型頭痛などの評価が必要)
    • 気分の落ち込み・意欲低下が2週間以上続いている(うつ病・適応障害の可能性)
    • 動悸や胸の違和感を伴うだるさ(循環器系の評価が必要)
    • 発熱・体重減少・夜間の発汗がある(内科的疾患の鑑別が必要)
    • めまい・しびれ・ろれつが回らない(速やかに医療機関へ)

    「梅雨だから」と思い込んで我慢を続けることが、別の病気の発見を遅らせてしまうことがあります。気になる症状があれば、迷わずかかりつけ医にご相談ください。

    運動と一緒に整えたい、暮らしの3つの習慣

    食事は「温める・足す」を意識して

    梅雨期は食欲が落ちやすく、つい冷たい飲み物や麺類に偏りがち。温かい味噌汁やスープを1日1杯、たんぱく質とビタミンB群を意識して足すだけでも、夕方の重さがずいぶん変わります。「これさえ食べれば梅雨だるが消える」食材は残念ながら存在しませんが、地味な底上げが一番効きます

    入浴は「ぬるめで15分」が黄金律

    就寝1〜2時間前に、38〜40℃のぬるま湯で15分ほど入浴します。一度上がった深部体温がゆっくり下がっていく過程で、自然な眠気が訪れます。シャワーで済ませがちな方こそ、梅雨の夜は湯船に浸かる時間を確保してみてください。

    起床時刻のばらつきは「1時間以内」に

    平日と休日で起きる時間が大きくズレると、それだけで時差ボケに近い負担が身体にかかります。雨で外出が減るこの時期こそ、起床時刻のばらつきを1時間以内に収め、朝の光を意識的に浴びる——たったこれだけで、生活リズムは大きく安定します。

    「ひとりで続けるのが難しい」と感じたら

    五反田のパーソナルジムsazanamiでパーソナルトレーニングを受ける女性

    梅雨期は外出のハードルが上がる季節。「やった方がいいのは分かっているけれど、雨の日はつい横になってしまう」
    ——そんな声をよく耳にします。続かないのは意志の弱さではなく、環境とのミスマッチであることがほとんどです。

    sazanami Gotanda | Personal Fitは、五反田・不動前駅から徒歩圏にある医師監修のパーソナルジムです。心地よいプライベート空間で、お一人おひとりの体調や生活リズムに合わせて、無理なく続けられるトレーニングを設計します。雨の日でも通いやすい立地と、完全予約制で待ち時間のない仕組みが特徴です。

    初回体験は¥0(税込)/カウンセリング込み・手ぶらでOK。「今年の梅雨こそ、軽やかに過ごしたい」と感じたら、まずは一度お試しください。

    sazanamiの体験予約はこちら

    まとめ——梅雨を「整える季節」に変える

    梅雨期の不調は、原因の細部までは解き明かされていません。それでも、運動と自律神経の関係については、HRV研究のメタアナリシスを含めて確かなエビデンスが積み上がりつつあります。

    大切なのは「梅雨だるを治す」と気負うことではなく、無理のない範囲で身体を動かし、暮らしのリズムを整えていくこと。憂鬱になりがちな雨の季節を、自分の身体と向き合う”整える季節”に変えていきましょう。ひとりで続けるのが難しければ、伴走してくれる場所を頼るのも立派な選択です。

    関連記事:

    参考文献

    • Impact of Barometric Pressure on Migraine: A Systematic Review. Cureus, 2024.
    • Sato J, et al. Lowering barometric pressure aggravates pain-related behavior in mice. PLOS ONE, 2019.
    • The impact of long-term exercise intervention on heart rate variability indices: a systematic meta-analysis. Frontiers in Cardiovascular Medicine, 2025.
    • Does Exercise Training Improve Cardiac-Parasympathetic Nervous System Activity in Sedentary People? A Systematic Review with Meta-Analysis. International Journal of Environmental Research and Public Health, 2022.
    • The Impact of Stretching Intensities on Neural and Autonomic Responses: Implications for Relaxation. International Journal of Environmental Research and Public Health, 2023.

    ※ 本コラムは医学的な情報提供を目的としており、特定の症状の診断・治療を行うものではありません。気になる症状が続く場合は、医療機関にご相談ください。

    梅雨だると運動に関するよくある質問

    • 梅雨だるは病気ですか?放っておいても大丈夫でしょうか?

      「梅雨だる」「気象病」はいずれも正式な医学用語ではなく、暮らしの中で生まれた呼び名です。多くの場合は生活習慣の調整で軽快する範囲ですが、背景には片頭痛・自律神経の揺らぎ・季節性の気分の落ち込みなど複数の病態が隠れていることもあります。気分の落ち込みが2週間以上続く、頭痛で市販薬の使用頻度が増えている、動悸や息苦しさを伴う、といった場合は放置せず、かかりつけ医にご相談ください。

    • 気圧予報アプリは梅雨だる対策に活用したほうがいいですか?

      気圧予報アプリそのものに治療効果があるわけではありませんが、自分の不調が出るタイミングを「見える化」できるのは大きなメリットです。とくに片頭痛持ちの方は、気圧が大きく下がる日を事前に把握できれば、予防的に休息や水分補給、軽い有酸素運動を組み込みやすくなります。注意点は、アプリの予報に過敏になりすぎて「悪化するに違いない」と思い込みすぎないこと。あくまで生活設計の補助ツールとして使うのが理想です。

    • 梅雨期にやってはいけない運動はありますか?

      「やってはいけない」ものはありませんが、体調が揺らぎやすい時期に高強度の運動を詰め込むのは避けるべきです。HIITや高重量の筋トレ、長距離ランニングを連日行うと、交感神経が強く刺激され、夜の寝つきが悪くなったり翌日のだるさが増したりすることがあります。梅雨期は「中強度・続けやすい運動」を週に何度か、を基本にしてください。普段ハードに運動している方も、雨の日は意識的に1段階トーンを落とすのがおすすめです。

    • 食事面で梅雨だるに効くものはありますか?

      これを食べれば梅雨だるが消える」という特定の食材は、残念ながら強い根拠が示されていません。ただし、冷たい飲料の摂りすぎを控える・温かい味噌汁やスープを1日1杯加える・たんぱく質とビタミンB群を意識して足すといった地味な底上げは、夕方の重さや睡眠の質に確実な差を生みます。とくに朝食を抜きがちな方は、温かい汁物だけでも口にすると、午前中の体感が変わるはずです。

    • sazanamiでは梅雨期の体調に合わせたトレーニングができますか?

      はい、可能です。sazanamiは脳神経外科医が監修するパーソナルジムで、その日のコンディションに合わせて強度や種目を柔軟に調整します。「今日は頭が重いので軽めに」「雨で気分が沈むので背中をほどく動きを多めに」といった微調整も、マンツーマンだからこそ可能です。完全予約制で待ち時間がなく、五反田駅徒歩7分・不動前駅徒歩9分と雨の日でも通いやすい立地。初回体験は¥0(税込)/カウンセリング込み・手ぶらでOK。まずはご自身の体調と向き合う時間をつくりに、お気軽にお越しください。

    sazanamiのコラムは
    全て医師が執筆しております。

    株式会社Sazanami代表取締役 大原 啓一郎

    [ 執筆者 ]

    株式会社Sazanami代表取締役

    大原 啓一郎

    脳神経外科専門医
    脳神経血管内治療専門医
    日本医師会認定健康スポーツ医

    予防医療と運動療法の普及に取り組む。運動と医療を、もっと身近に。心地よく通える空間で、自然と健康になれる場を作りたい。そんな想いから、
    フィットネスブランド「sazanami」を立ち上げた。

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    Vol.13

    Access/Information

    店名:
    sazanami Gotanda | Personal Fit
    住所:
    東京都品川区西五反田7丁目16-3 東京モリスビル第10 2階
    営業時間:
    09:00 ~ 22:00 (予約状況により変動)
    定休日:
    木曜日
    アクセス:
    ・五反田駅 徒歩約7分
    ・不動前駅 徒歩約9分

    ・大崎広小路駅 徒歩約5分
    連絡先:
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